6年運営したローカルメディアを手放した理由

掛川市に引っ越して7年ほどが経ちました。引っ越したばかりの頃は街のこともよく知らず、カフェや床屋、病院だってどこにあるかわかりませんでした。問題はネットで検索をしても、正確な情報が出てこないことでした。

情報がネットにないというのは、この世に存在していないと同じ。

そこでブログの延長線上で始めたのが、「掛川暮らしのマガジン」でした。ミッションは、「掛川の情報インフラを整える」でした。

まずやったこと

まずは気になるお店に立ち寄り、飲食店を中心に取材をして行きました。初めて行くお店ばかりだったので緊張しましたね。

食べたものの写真を撮り、記事を書く。この繰り返しです。そしてSEOにも少しずつ力を入れて行きました(独立時はSEOの仕事もたくさんやっていたので、知見があった)。

なぜSEOなのかというと、安定したPVはもちろん、掛川のキーワード検索をしたときに情報が全くない状態だったからです。これでは、観光や移住を検討している方からすると、「掛川って何もない・・」となってしまいます。これを避けるために、まずは「検索結果を整える」ことに注力しました。

それからFacebookやInstagramを中心に徐々に知られていき、1記事で1万PVが出たりすることもあり、「読んだことあるよー」という声をかけてもらうことも増えて行きました。

掛川市公認となり、スマニューとも提携

人口10万の街でひっそりと誕生したこのブログメディアは、徐々に認知されるようになり、Instagram2500人になり、掛川市からも公認をいただきました。

また、スマートニュースとの連携を行ない、街の情報を都内を中心にデリバリーできるようなりました。

なぜ手放すのか

今回愛着のあるローカルメディアを手放そうと思ったのは、認知も取れ、立ち上げフェーズが終わったからです。次は、メディアを中心とした企業やお店との提携、まちづくりからツアーや体験のリアルコンテンツ作りの可能性まで秘めています。

しかし、私一人ではどうしても回らず、更新も滞り、ビジョンもしっかりと遂行できない状態に陥りました。

このままではメディアが死んでしまうと思い、さらに進化させてくれる人を探すことにしました。

僕の世代は、ローカルメディアが盛んだった頃です。Wordpressで簡単に作れ、更新できるようになり、乱立していました。ただ、立ち上げに何百万円とお金をかけているメディアも、2年もすると記事の更新がストップします。

そしてドメインの契約が切れ、消えていく・・・。

それまでの取材記事も写真も、全て消えていくんです。そんなローカルメディアを嫌というほど見てきました。100万PV/月あるようなメディアも、更新が止まって行きます。

街の情報資産を絶やさない

私はデジタルコンテンツは街の資産であると考え、そうはしたくないと思っていました。ローカルメディアが引き継がれていく文化を作り、街の情報インフラを整えるミッションに向かって進めて行きたいと思っていました。

だから今回繋ぐことができて、ホッとしています。

ローカルメディアは誰にも注目されないけど、お店が潰れ、地方が衰退していく中で、街の情報資産を残していく上でとっても大事な存在です。

もちろん観光コンテンツを発信する集客装置としてのメディアの役割もあるのですが、情報を記録し、街の記憶をデジタル化して残していくという役割も今後大きくなると思っています。

なぜならAIで全てが平均化する中で、日本の小さな街に残るアイデンティティやその街らしさを残していけるから。子供達が大きくなり、街を出て東京や海外に出ていった後でも、自分のルーツをいつでも振りかえることができるからです。

記録した情報が効果を発揮した

コロナ禍になり、活動自粛やイベントの中止などが相次ぎました。多くの飲食店やイベントをする人たち、アーティストたちが影響を受けました。

その際、コロナ禍前に取材をして記事にしていた写真やテキストが、飲食店の皆さんの力に少しでもなっていることを知りました。少しでも希望を残せたこと、やって良かったと思う瞬間です。

またコロナ禍では飲食店のテイクアウトのサービスを立ち上げたのですが、メディアとテイクアウトサービスの相性がよかったことを覚えています。

次のアクションへ

僕の掛川市における役割が一つ終わったと思っています。今はおにぎりプロジェクトを始めています。

このプロジェクトも、小さな街に深く入り込んで、その街の暮らしや人、子どもたちを掘り下げ、関係性の中から日本らしさ、掛川らしさを追求しています。学校が廃校になる前に、地域の景色や文化が消える前に。きっと僕は今日も明日もどこかの現場にいるでしょう。

農家さんから天気の見方を教えてもらい、田んぼの草を抜き、猪から稲を守り、リアルな関係性から生まれる言葉、写真、映像、イベントなどを通して、街の魅力を再発見し、次の世代に繋げていきます。


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